[ テーマ: 判例情報 ]
2008年1月29日17:51:35
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2007年5月29日14:26:49
今日の日経新聞によると、十全総合病院に勤務していた麻酔科の女性医師が自殺したのは「うつ病発症後に病院が適切な処置を怠ったため」として、病院に7600万円の損害賠償の支払いを命ずる判決が、大阪地裁であったそうです。
判決理由は「安全配慮義務」を怠ったと認定しています。前回このページで東京地裁の「過労自殺」の記事でふれましたが、労働安全衛生法第3条は「事業者の責務」として「安全配慮義務」を課しています。
通常の損害賠償は、相手側に「故意、過失」による「不法行為」が存在した場合に認められるのですが、「安全配慮義務」は「措置義務」で企業に労働者の安全や健康に配慮するよう求めています。適切な配慮をしたことを企業側が証明できない場合は損害を受けた側(労働者)の申したてを裁判所は認める、ということです。
同じ紙面に農相が「政治とカネ」問題を巡り自殺したとの記事があります。こちらは、説明責任を果たさず、自殺という解決?を選んでいますが、残念なことです。
今日のブログは、東京都社会保険労務士会千代田・中央支部の皆様にも、初めて配信いたしました。感想は下記へお願いします。
特定社会保険労務士 恩田和明
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2007年5月16日14:12:00
皆様お元気ですか?
今日は、自分の会社の幹部がライバル会社に転職した場合にどう対処するかを考えてみましょう。
4月25日の日経新聞によると、東京地裁で「ヤマダ電機の元男性社員に約140万円の違約金」を支払うよう判決があったようです。会社は社内規定に、退職後1年以内に競業他社に転職した場合は「退職金の半額と退職直前の給与6ヵ月分」を違約金としてし返還を求めると規程していたようです。この社内規定について「幹部社員は独自の販売方法や経営戦略を知ることができ、競業他社への転職制限を課すことも不合理ではなく、1年間という制限期間も不相当に長いとはいえない」と認容しました。ただし、給与は1ヵ月分が相当としています。
皆さんの会社では、就業規則や退職金規定に、このような規定を作成しておられますか?
幹部社員が退職した場合に、ライバル会社に転職されて困ったなとどいうことが起きないようにしたいものです。
特定社会保険労務士 恩田 和明
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2007年5月8日15:03:00
小児科医の自殺に二つの判断
3月14日と29日に、立正佼成会附属佼成病院の小児科の医師の自殺をめぐり、同じ証拠と事実から東京地裁で二つの異なる判決がでました。
14日の判決は労災の遺族補償給付を認めたもので「管理職就任直後、同僚の相次ぐ退職で、月八回の泊まり勤務など激務を強いられ、睡眠不足から相当なストレスを受け精神的負担も重なり、うつ病に罹患し判断能力が制約された状態で自殺をした」ので業務との因果関係を認め、この自殺を労災と認めました。
1方、29日の判決は、遺族が病院に対して慰謝料二億五千万円の損害賠償を求めたが「宿直回数は他の病院と比較して突出して多いとはいえず、仕事が特に過密とはいえず、うつ病発症の危険性を持っていたともいえない。仕事以外にも健康状態や相続問題などの心理的負担を抱えていた」のでうつ病と仕事と因果関係は認められないので、請求を棄却しています。
労災は「無過失責任」で事業主に過失がなくても業務との相当因果関係があれば業務上を認めています。これに対して損害賠償請求は、民法415条の債務不履行による損害賠償か、703条の不法行為による損害賠償を根拠とすることになります。すなわち自殺の原因がうつ病であったとしても、うつ病に罹患したことと、仕事との因果関係がイコールであり、仕事を命じた事業主に債務不履行か不法行為があったかが問われます。
新聞記事では「同じ証拠で違う判決が出た理由が分からない」と弁護士が述べたとありますが、特定社会保険労務士としての私としての見解は、今後は、労働安全衛生法の第3条事業主の「安全配慮義務」違反で争えば、上告審では違う判決がくだるのではないかと注目しています。恩田